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ダイバーシティ・マネジメントとは

ダイバーシティ・マネジメント:企業が経営として行うダイバーシティ

 

企業経営でのダイバーシティの位置づけは「経営戦略」とされます。それは、人材、マネジメント、マーケティングに係る基本戦略の課題であって、福利厚生などの周辺的な制度問題ではないからです。ことに欧米企業では、競争優位の重要な戦略であり、ダイバーシティの経営管理が周到に実施されています。多様な能力を活かし合うダイバーシティ・マネジメントは、同時に、社会が必要とする労働力化、市場化、社会貢献化といった公益を進める手法とも重なっています。

 

日本におけるダイバーシティ・マネジメントの達成課題は、

①労働力の確保

②イノベーションの創出

③価値創造による収益力の向上、にあるとされます。

多様な価値観を有する幅広い層の人材を確保し、多様な人材の能力を最大限活用するダイバーシティ・マネジメントは、急激な人口減少・労働力不足に直面し、グローバル経済化と産業のイノベーションを課題とする日本企業と社会にこそ重要な考え方と言えます。

 

ダイバーシティ・マネジメントの成果

ダイバーシティ・マネジメントの成果は、大きく2つに分類することができます。

①直接的成果

 プロダクトイノベーション:「違い」を生かしたイノベーションの創出
   製品・サービスを新たに開発したり、改良を加えたりするもの
 プロセスイノベーション:多様な市場ニーズへの対応
   製品・サービスを開発、製造、販売するための手段を新たに開発したり、改良を加えたりするもの(管理部門の効率化を含む)

②間接的成果

 外的評価の向上:人材活用の裾野を広げる

   多様な人材を活用して成果を生みだすことで、顧客満足度の向上、社会的認知度の向上など、顧客や市場からの評価につながる

 職場内の効果:多様な人材の能力を発揮させる

   従業員の能力を発揮できる環境がモチベーションを高め、働きがいのある職場を実現する

   (出所:「ダイバーシティ・マネジメント」谷口真美著 2013年を筆者加工)

 

ダイバーシティ・マネジメントのメリットとデメリット

ダイバーシティ・マネジメントのメリットとデメリットは次のようにまとめることができます。

<メリット>

・色々な考え方が共存し、新しいアイデアが生まれる

・社員一人ひとりの能力が活かせる、モチベーションが上がる

・イノベーションの可能性が高まる

・付加価値生産性が高まる

・高齢者、外国人、障がい者に優しい組織づくりができる=働きやすい環境に

・業務の改善、効率化につながる

・組織の人材管理力が高まる

・企業価値が向上する:CSRへの評価、投資への訴求力

・リクルートに効果がある:求職が増える、離職が減る

<デメリット>

・意見集約に時間がかかる

・マネジメントコストがかかる

・逆差別という反発や習慣・文化的コンフリクトを生む

・パワーバランスに労力を要する

 

基本はヒューマンライツ(ひとを尊ぶ)

ダイバーシティはヒューマンライツつまり人権に根差し、「働く上で人の尊厳を実現する考え方」です。「人権」は、その属性のいかんを問わずすべての人が生まれながらに持っているものであり、尊ばれるべきものです。しかし、人間性(ヒューマン)や権利(ライツ)は、社会生活の前面にいて常に人々の意識を揺り動かしてくれるわけではありません。とりわけビジネスの世界は熾烈な競争環境にあり、数字だけが重要視され、ヒューマンライツの意識が後退することもあります。

 

こうした現実にあって、ダイバーシティは「すべての人の尊厳」に敏感であることを常に求めます。違うものがお互いを大切にし合い「豊かな人生」「生き生きとした仕事生活」を送れることが人の尊厳であることを、身近に指し示してくれるのです。と同時に、「人の尊厳」にこそこれからの企業が収益を生みだすポイントがあることも教えてくれます。

企業においては、こうした意識をきちんと持つか否かが、ダイバーシティを導入しても周辺的・技術的な制度整備として終わるのか、あるいは真の果実を業績として受け取るかの分かれ道になるでしょう。人間を大切にする経済が人間の可能性を拡げる。それをマネジメントで実現し、利益を生むのがこれからの経営だといえるでしょう。

 

「多様性の課題・女性」に必要な視点

日本のダイバーシティでは「女性がらみ」が優先課題になっています。背景として、少子化問題がありました。次いで現在では、労働力不足への対応や、女性マーケットの育成ニーズが挙げられます。いずれも国力や経済力の課題からの「ニーズ」とも言うべきものですが、女性も男性と同じ人間であるという視点はあまり意識されていません。残念ながら女性だけでなく、高齢者や障がい者、外国人労働者に対しても、「人権・尊厳」からの目線の弱さが指摘されるところです。

 

これまでの日本の女性の社会での地位は、おおむね男性・夫に経済的に従属する関係でした。それは、世界の目には十分に「人権問題」として映る関係で、投資活動やCSR評価にも大きな影響を与えてきました。日本企業にあっては、まず最初に「こうしたことはおかしい」と意識する必要があります。

世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダー・ギャップ指数」は、政治・経済・教育・健康面における男女差を表した指数ですが、日本は世界の約150か国中、常に100位以下であり、特に政治と経済面での低さが目立ちます。

GDP世界3位の日本が、女性の活躍度ではアジアや中近東、アフリカ諸国よりも低いという客観的事実を前に、やはり「こうしたことはおかしい」と意識する力が無ければ、世界から「おかしい」と指摘されても仕方ありません。

 

一社)日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構専務理事 油井文江